共有されるデジタル責任の枠組み
アルゴリズムによる操作と極端な個別化が当たり前になったデジタル環境では、プラットフォーム、政府、利用者の間で責任を公平に配分する倫理的枠組みを構築する必要がある。企業が法令遵守の負担の大半を引き受ける従来の構造とは異なり、デジタル時代には、技術の創造、管理、消費に関わるすべての主体の積極的な参加を組み込んだ、共有の倫理が求められる。
この枠組みを築くには、次の原則を出発点としなければならない。
アルゴリズムの透明性:プラットフォームは、アルゴリズムを支配する仕組みについて、利用者が理解できる形で情報にアクセスできるようにしなければならない。これには基本的な動作規則の公開だけでなく、アルゴリズムの社会的影響を検証できる独立した監査の実施も含まれる。
利用者の自律性の保護:システムは、利用者の行動を誘導・操作するのではなく、自律的に判断する能力を強めるよう設計されなければならない。そのためには、情報の流れや接するコンテンツを制御する実質的な選択肢と、マイクロターゲティングや個別化のシステムに参加しない権利を提供する必要がある。
政府の責任:政府は、イノベーションを犠牲にせずに市民を保護する規制の枠組みを構築しなければならない。欧州連合の一般データ保護規則(GDPR)のようなデータ保護法は良い出発点だが、アルゴリズムの倫理、人工知能の利用、大規模監視などの領域を扱うよう拡張する必要がある。
利用者のエンパワーメント:教育とデジタル・リテラシーは、あらゆる倫理的システムに不可欠な要素である。利用者には、自分が使用する技術を理解し、制御できるようにする道具と知識が提供されなければならない。これには学校や大学での教育プログラムに加え、プライバシー、サイバーセキュリティ、デジタル・アイデンティティ管理などに関する継続学習のための教材の提供も含まれる。
分散型ガバナンス:責任を分配するモデル
ブロックチェーンや分散型自律組織(DAO)のような分散型技術の発展は、単一の中央機関に依存しないガバナンス・システムを構築できることを示してきた。意思決定の権限を少数の企業に集中させる代わりに、これらの技術は、コミュニティが透明かつ民主的に集団的な意思決定を行うことを可能にする。この分散型ガバナンスの考え方は、デジタル責任を配分するモデルとして活用でき、利用者のオンライン生活に影響する決定に、利用者自身が実質的な発言力を持つことを保証する。
とりわけDAOは、投票によって意思決定を行い、その結果をブロックチェーン上に改変不能な形で記録することで、透明性を保証し、腐敗を防ぐガバナンス構造を構築する機会を提供する。こうしたシステムでは、コミュニティが独自の規則を定め、必要に応じた倫理的枠組みを作ることができ、開発者、利用者、管理者の間の力の均衡を図る、分配された責任が促進される。
人工知能時代のデジタル権
人工知能の進歩と生活のあらゆる側面への組み込みは、濫用から市民を守り、デジタル主権を保証する新たなデジタル権を整備する必要性を提起している。これらの権利には、次のものが含まれるべきである。
説明可能性への権利:市民は、自分の生活に影響する判断を下すアルゴリズムがどのように機能するかを理解する権利を持たなければならない。これには、広告のターゲティング、コンテンツの推薦、モデレーション上の判断に用いられる機械学習モデルも含まれる。
アルゴリズムによる差別を受けない権利:利用者は、過去の偏見や排除のパターンを反映したデータで学習したアルゴリズムから生じる偏りや差別から保護されなければならない。そのためには定期的な監査を実施し、独立した監督の仕組みを設ける必要がある。
つながらない権利:仕事と私生活の境界がますます曖昧になる世界では、職業生活や私生活に不利益を受けることなく、デジタル環境から離れる権利が保障されなければならない。この権利は、テレワークとプラットフォーム経済の文脈で特に重要である。
デジタル・アイデンティティへの権利:人々は自らのデジタル・アイデンティティを完全に制御し、自分のデータをどのように、いつ、誰と共有するかを決められなければならない。これには、移動の自由を制限する独占的なシステムに閉じ込められることなく、異なるプラットフォームやサービスの間でデジタル・アイデンティティを持ち運ぶ権利も含まれる。
